フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜
そんな穂乃香の心情を知ってか知らずか、奏はまたもや思いがけない言葉を口にする。
「あっ、いや。今のは忘れてくれって、言うのは無理だよな。どうも俺は、穂乃香のこととなると、上手く立ち回れなくなってしまうようだ。けど、今から〝記念すべき初めてのデート〟に相応しい日にしてみせるから、上書きしてくれると嬉しいな」
始めはバツ悪そうに自嘲しながら、最後には、照れくさいのか冗談めかすように話す奏の姿には、職場で見慣れているはずの泰然とした社長としての面影は微塵もない。
奏と一緒に暮らすようになって、時折ふいに奏はこうして素であると思われる、少年のような飾らない無邪気な一面を垣間見せるようになった。
その頻度が、あの夜を境に増えてきたように思う。
それだけ奏が穂乃香に心を許してくれているのだと思うと嬉しいし、その相反する双方の姿がかけ離れていればいるほど、その威力は凄まじい。
――こんな可愛らしい一面もあったんだ。
穂乃香が奏からのギャップ攻撃に人知れず身悶えているその隙に、奏はスマートに支払いを済ませていたようだ。
それからほどなくして、着替えを終えた穂乃香は奏のエスコートによりウィンドウショッピングを楽しんでいた。
むろん、奏への想いを告げるタイミングを窺いながら。
なのでずっと鼓動が騒がしくて仕方がない。