フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜

 照明が最小限に抑えられているせいだろうか。

 シックな色味で統一された船内は、かの名作洋画にも描かれていた豪華客船を再現したかのような、なんともロマンチックな雰囲気を漂わせている。

 なんだか異次元の世界にでも迷い込んだかのような、そんな錯覚に陥ってしまいそうだ。

 未知の世界に足を踏み入れた穂乃香は、地に足がつかずふわふわとして、あたかも夢の中の出来事のように心ここにあらず、終始呆気にとられていた。

「俺のことは気にせずシャンパンを飲むといい」

 アンティーク調の丸いテーブルを挟んだ正面に位置する奏から、甘やかな声音でアルコールを勧められたことで、ようやく穂乃香は現実世界へと意識を向ける。

 車の運転があるため奏はノンアルコールのシャンパンを飲むようだ。

 せっかくアルコールを勧めてもらったが、奏には出会った際に、深酔いしたせいで多大な迷惑をかけているので、穂乃香も同じものにしてもらった。

 その際にも、面白おかしくあの夜を仄めかす少々意地悪な奏の言動に穂乃香は右往左往させられもした。

「気にせず飲めば良かったのに」
「いえ、元々お酒はあまり得意ではないので」

「そうか。それは残念だな。久々に、酒に酔って俺に甘えてくる可愛い穂乃香が見られると思って、楽しみにしてたんだがな」
「……もう。揶揄わないでください」
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