フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜
奏の放った甘やかな美声を耳にした穂乃香は、これから繰り広げられるであろう情事への期待感に、胸を高鳴らせ身を打ち震わせる。
――今から奏さんにたっぷりと愛し抜いてもらえるんだ。嬉しい。
これまで生きてきたなかで、これほどまでに誰かを欲したことなど一度もなかった。そしてこれほどまでに、誰かに欲してもらえることがこれほど幸福なことだなんて、思いもしなかった。
そんな特別な相手である奏と巡り会え、こうして想いを通じ合わせ、本物の夫婦になることができた。まだ不安要素は残っているけれど、奏となら乗り越えられるはずだ。
――この幸せをずっとずっと大切にしたい。たとえ何があろうと。
穂乃香は奏にすべてを委ねるために、奏の広い背中にぎゅっとしがみついた。それとほぼ同時に、奏から思いがけない台詞が投下される。
「今すぐここでと言いたいところだが、避妊具はベッドルームに置いてきてしまったから、場所を変えようか。俺の愛しい愛しいお姫様」
そしてそう言ってきた奏が身体を起こして離れていこうとする。
おそらく穂乃香のことを抱き上げてベッドルームまで移動するために、体勢を変えようとしているのだろう。
奏の行動を先読みした穂乃香は、ほとんど条件反射で懇願を口にしてしまっていた。
「もう待てない。今すぐじゃダメですか?」
まさか穂乃香の口から、そんな台詞が飛び出すとは思いもしなかったのだろう。穂乃香からの懇願に、奏は虚を突かれたように茫然としてしまっている。
たとえるならば、鳩が豆鉄砲でも食らったときのような、呆けた表情だ。