フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜
これまで第二秘書として奏の側に付き従えてきたが、こんなにも間の抜けた表情にお目にかかったことはない。
奏の新たな一面を垣間見た穂乃香は、不謹慎にも胸をときめかせていた。
そこにようやく状況を把握した奏から、困惑に満ちたバリトンボイスが返ってくる。
「穂乃香、自分が何を言っているかわかってるのか? 俺は、後継者が欲しくて穂乃香と結婚したわけじゃない。ただ側にいて欲しいから結婚したいと思ったんだ。あのルールのことを気にかけてくれているのなら、そんな気遣いは無用だ。必ず父を説得してみせるから、俺を信じてほしい」
何よりも穂乃香のことを最優先してくれる、優しい奏らしい言葉だ。
奏の気持ちはとても嬉しい。けれど、あのルールは関係ない。あんなルール関係なく、奏と何の隔たりなく深く繋がりたいという想いだけだ。
それでもし、奏との子どもを授かったのなら、こんなにも喜ばしいことはない。なんなら今すぐにでも授かりたいーーそう心から願っているくらいだ。
まさかこんな風に、愛する人との子どもを欲しいと願う日が来ようとは自分でもびっくりだが、この感情こそが人を心から愛するということなのだろう。
だっからこの感情を大事にしたい。そしてこの感情を抱かせてくれた奏に自分の気持ちを伝えておきたい。
だからといって、それを奏に強要するつもりは毛頭ない。何よりも穂乃香を尊重してくれる奏と同じように、奏の気持ちを尊重したいと思っている。
穂乃果は未だ呆然としている奏に向けて、胸の内をあかそうと言葉を紡ぎ出す。
「違うんです。あのルールは関係ありません。今夜こうして奏さんと思いが通じ合えて、本物の夫婦になれたんです。愛おしい旦那様である奏さんとの子どもを望むのはごく自然なことだと思うのですが、奏さんはまだ子どもを望んではいないんですか? だったら奏さんの望むとおりに」
けれどすべてを伝える前に奏に動きがありそれは叶わなかった。