フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜
「……そ、そうでしょうか」
「ええ、間違いございません。奏様も、もうそろそろ空港にお着きになる頃です。我々もそろそろ出発いたしましょうか?」
「……そ、そうですね」
だが柳本からは、穂乃香の予想通りの言葉しか返ってこない。
穂乃香は人知れず深い溜息を漏らした。
――やっぱり、聞くだけ無駄だったか……。
奏と想いを通わせて、本物の夫婦となってからというもの、穂乃香に対する柳本の態度がガラリと豹変したせいである。
あれは、奏から渡米の話を聞かされた直後のことだ。
会長である父に呼びつけられた奏が席を外した際、柳本から忠誠心を誓うかのような言葉を告げられた時の光景が脳裏に浮かび上がってくる。
『穂乃香様は名実ともに、奏様の奥様になられたのです。奏様の奥様なのですから、この柳本一生、奏様の大事な奥様を守るためなら、この命投げ出しても惜しくありません。穂乃香様も、そのおつもりで、この柳本に何なりとお申し付けくださいませね』
そこで一度言葉を切った柳本の表情が柔和なものから一変し、般若のような形相でとんでもなく恐ろしい台詞をさらりとのたまったのである。