フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜

 だが柳本からは、一貫して落ち着き払った声音が返ってくるだけだった。

「わたくしの使命は奏様のご意向に沿うことでございます。つまり、今のわたくしに課せられておりますのは、奏様の奥様である穂乃香様をお守りすることと、穂乃香様が奏様の妻としてのお役目が滞りなく遂行できるようサポートすることでございます。ですので、穂乃香様もこれぐらいのことで取り乱されては困ります。奏様の妻として相応しい振る舞いをしていただかなくては」

 それは奏に長年付き従えてきた、執事兼秘書の模範解答のような言葉だ。確かに正しいのかもしれない。けれどもなんだか冷たく感じてしまう。

「そんなこと、言われなくてもわかってます。わかってますけど……」
「お気持ちはわかりますが、今は耐えてください。そうでなければ、奏様の培ってこられたものが無駄になってしまいます。何を意味するか、おわかりになりますよね」

 沈痛な面持ちで発せられた柳本の言葉に、穂乃香はハッとする。

 奏が培ってきたもの。
 
 それは、社員目線で考案された社内規格に始まり、風通しの良い社風、世界水準で進められてきた様々なプロジェクトや戦略。

 昨今注目されているSDGsでは、「経済成長」と「働きがい」の両者が重要であるとされているが、注目される以前から奏がいち早く着目し取り入れたものであるらしい。

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