フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜
「はい。奏さんこそ、ご無事で何よりです。本当に……良かった。お帰りなさい」
「ああ。ただいま、穂乃香」
穂乃香の歓喜に満ちた涙で濡れた瞳には、奏だけしか映ってはいないし、耳にも奏の声しか届きはしない。
しばし互いの無事を確かめ合うようにして見つめ合っていたふたりは、いつしか微笑み合い、しっかりと抱きしめ合っていた。
あたかもこの世界にはふたりだけしか存在していないかのように、ふたりを取り巻く空気がまろやかに蕩けて甘さを増してゆく。
そんなふたりの邪魔をするように、すっかり存在を失念していた男の低い声が室内に響き渡った。
「おい、そこのふたり、俺を放置してイチャつくなっ! それになんなんだ、この男らわ!」
ビクッと肩を跳ね上げてしまった穂乃香の脳裏に、再び忌々しい記憶が浮上しそうになる。たがすぐに奏から頼もしい言葉がかけられたおかげで、幼い頃の嫌な記憶に囚われずに済んだ。
「俺が側にいるから大丈夫だよ。すぐに黙らせるから少しだけ待っててほしい」
奏の胸にぎゅっとしがみつくことで応えた、穂乃香の身体を逞しい胸に今一度ぎゅっと抱き寄せ、ポンポンと優しく頭を撫でながら男には冷ややかな声音を投げかける。