フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜
そんな男に対し、奏は変わらず淡々とした冷たい声を吐き捨てる。
「覚えておくといい。顔も知らずに金だけで雇っただけの人間は、すぐに裏切る。ああ、失礼。犯罪者に成り下がった愚かな男に忠告しても無駄だな」
「ーーあ、あの男っ!」
奏の物言いに憤慨するのかと思われたが、〝裏切り者〟に心当たりがあったようで、そのことに激昂しているようだ。
そこに、奏の冷たく鋭い重低音が容赦なく放たれた。
「言っておくが、二度目はない。もしもおかしな動きがあれば、その時は、今度こそ社会から抹消する」
奏の胸に抱きつき顔を埋めている穂乃香に奏の顔は見えないが、その声だけで奏の怒りがどれほどのものかが窺い知れるくらい、殺気立っている。
それを二メートルほど離れているとはいえ、正面からまともに食らったのだ。
さぞかし怖かったに違いない。
事の顛末を見届けようと、穂乃香はゆっくり顔を上げてみた。
すると、それを物語るかのように、顔面蒼白となった男はこの世の終わりだというような表情で茫然としてしまっている。