紳士な俺様社長と離婚前提の契約婚!?

 それは奏も同じようで、こちらに来てからというもの、奏は穂乃香の側から片時も離れようとはしないし、甘い台詞を欠かさない。

 この前も、手の大きさを比べるのに、互いの手のひらを重ね合わせていただけだというのに……。

「私は指が短くて不格好ですけど、奏さんの手は大きくて男らしですよね。ほら」
「穂乃香は俺を煽るのが上手いな。そんな風に上目遣いで可愛いことを言われたら、もう我慢なんてできない」

「あっ、ちょ……やんっ、待って」
「待てない」

 こんな風に、あの甘やかな美声を駆使して、歯の浮くような甘い台詞を囁かれ、高級感漂う広く豪奢なスイートルームのベッドに穂乃香の身体を組み敷いて、朝も夜もなく穂乃香の身も心もとろとろに蕩かせて骨抜きにされてしまうのだった。

 こちらに来てもうすぐ二週間になるが、目覚めた際には、大抵生まれたばかりの子鹿のごとく足腰立たなくされている気がする。

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