紳士な俺様社長と離婚前提の契約婚!?
出会いは突然に、鮮烈に

 奏にとって彼女ーー葛城穂乃香との出会いは鮮烈なものだった。

 あの夜、父・恭一《きょういち》に呼びつけられていた奏は、田園調布にある実家のリビングで見合い写真を見せられていた。

「縁談だとなかなか相手方の本音も見えないですしね。人生を共にするパートナーですから慎重になっているだけで、結婚する気がない訳じゃありません。俺ももういい大人なんですから、結婚相手ぐらい自分で決めさせてくださいよ。他に用がないのなら帰ります。それじゃあ」
「あっ、おい。奏、待ちなさい」

 もう何度目になるかわからない台詞を吐いたというのに、まだ引き留めようとする父の声を振り切り、そのまま実家を後にしたのだが。そのまま自宅であるマンションに帰る気にもなれず馴染みのバーへと立ち寄った。

 そこでまさか理想通りの女性に会えるなんて思いもしなかった。

 月並みだが、彼女の香りを嗅いだ瞬間、物凄い衝撃が全身を駆け巡った。

 奏にとって、彼女との出会いはそれほどに鮮烈だったのだ。

 ーーこんなこともう二度とないかもしれない。否、これは運命に違いない。

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