紳士な俺様社長と離婚前提の契約婚!?
匂いに敏感だったおかげでこれまで散々な目に遭ってきたのだから、奏がそう思うのも当然だろう。
物心ついた頃から既に匂いに敏感だった。
そのせいで大なり小なり嫌な思いもしたし、不愉快極まりない思いもしてきたが、思春期になるまでは特に支障もなかった。
けれど思春期になった途端に、色気づきはじめた女子の醸し出す匂いに振り回されるようになる。
大企業の御曹司という肩書きとファッションモデルだった母親譲りで恵まれた容姿も災いし、思い出すのも煩わしくなるほど、それはそれは散々な目に遭ってきて今に至る。
これまで何度自分の体質を呪ってきたか。
ありとあらゆる検査もしたし体質を変えようと様々な試みも実行してみたが、いつまで経っても体質が改善されることはなかった。
だったら好みの香りを醸し出す理想の女性に出会えるまで待つしかない。
そうは思いながらも一向に現れる気配がないため、ほとんど諦めかけていた。
それもこれもあのおかしなルールのおかげで、タイムリミットの三十五歳になるまで二年と少ししかないからだ。