フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜
今にして思えばすべてはこうなる運命だったに違いない。
そう思えるほどにその日はいつもとはまるで違っていた。そう、なにもかもがーー。
いつもなら他の客の匂いが気になるため奥にあるVIPルームで一人静かに呑むのだが、その日は一人で呑む気にもなれず、かといって誰かと話す気分でもなかった。
いつも傍に控えてくれている執事兼秘書の柳本にも、少し離れたところで待機してもらっていたくらいだ。
カウンターの端に腰を落ち着けウイスキーの入ったグラスを静かに傾けては溜息を零していたのだが、ふいにどこからともなく芳しい香りが漂ってきて、奏の意識は完全に囚われてしまう。
ーーあの時のことをどう言葉に表せればいいだろう。
とにかくなにもかもが違っていたし、なにもかもが鮮烈だった。
小説などではよくあるが、あたかも雷にでも打たれたかのような物凄い衝撃だったことは確かだ。
この世にこんなにも芳しい香りを醸し出す女性が存在したのか、という驚きと嬉しさとで胸ははち切れんばかりだった。