紳士な俺様社長と離婚前提の契約婚!?
たとえ負の感情であったとしても、一刻も早く彼女の中から根こそぎ消し去ってしまいたい。などという身勝手極まりない、どす黒い感情が奏の中に芽生えていた。
そんな自分に驚きながらも、奏は彼女が自分にとって特別な存在なのだと確信していたのだ。
だからこそ未だ酔い潰れて現実と夢の狭間で、元婚約者の面影に苦しみ続ける彼女の心を少しでも癒やせるならと、どうしようもない虚しさと苛立ちに襲われながらも、元婚約者の振りまで演じていた。
ーー早くクズ男なんか忘れて、俺だけを見ろ。
そう思いながら元婚約者の役を演じていたはずが、いつしか揺るぎない想いへと変化していた。
この俺がそんなクズ男なんて忘れさせて、幸せにしてみせるーー。
これまで煩わしいとしか思えずにいた女性に対して、奏が生まれて初めて抱いた感情だった。
もうこれは運命に違いない。そうでなければ説明がつかない。彼女を慰めながら奏はそう確信していた。
だからこそ、彼女には包み隠さずなにもかもを曝け出そうとしたのだ。