紳士な俺様社長と離婚前提の契約婚!?
だというのに……。奏の胸で泣き疲れてしまった彼女が再び目を覚ました際には、その記憶は微塵も残ってはいなかったばかりか、なにもかもを曝け出そうとした奏の元から逃げるようにして立ち去ろうとする。
まるで奏との出会いをなかったことにしようとしている彼女の態度に、奏はしょうがないと思いつつも、この上ない虚しさを覚えていた。
そこでまさか二度にわたって同じ状況に置かれるとは夢にも思わなかったが、今にして思えば奏にとっては大きなチャンスだったのかもしれない。
奏は虚しさに苛まれながらも、元婚約者からの酷い仕打ちに打ちひしがれている彼女の心に寄り添えるならばと、彼女の介抱に徹していたのだが。
またもや奏のことを元婚約者だと勘違いした彼女に、涙ながらに縋られてしまっては、彼女のことを拒絶する術など奏にはなかった。
そんなこんなで、なにもかも理想の彼女との相性が良かったことに、二度目の衝撃を味わうことになる。
ーーやはりこれは運命に違いない。
彼女と一夜を過ごしたことで身をもって確信していた奏は、翌朝、奈落へと突き落とされることとなる。
だがそれから一ヶ月後、まさか彼女の方から奏の元に飛び込んでこようとはーー。