紳士な俺様社長と離婚前提の契約婚!?

 確かに穂乃香の身体には指一本触れてはいない。

 だが触れるか触れないかのすれすれの距離。しかも穂乃香より高い社長の体温と香りとに包まれてしまっているのだ。

 こんな状態では否が応でも意識してしまう。

 そんなことなどわかっているのだろう。否、絶対に確信犯だ!

 社長の好みだという穂乃香の香りを嗅ぐにしたって、嗅覚が秀でている社長ならこんなにも密着する必要なんてないのだから。

 ドクドクと高鳴ってしまう鼓動を自分では制御できず、焦れば焦るほど羞恥に襲われ顔どころか全身に熱が及んでしまう。

 きっと耳まで真っ赤になっているに違いない。それに社長が気づいていないはずがない。   
 
 絶対にまた揶揄ってくるに決まっている。

 そう思うとふつふつと怒りが込み上げてきて、カッと燃えるように熱くなってしまう。

 そんなタイミングで穂乃香の耳を社長の熱い吐息が掠める。

 知らず穂乃香は甘い声を零してしまっていた。

「やっ、あん……ちょっ、耳に息吹きかけるのやめてくださいっ!」

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