フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜
「誤魔化すな。だから俺は反対だったんだ。それなのに穂乃香は……俺の気も知らないで。俺がどれだけ心配したと思ってるんだ。生きた心地がしなかったんだぞ」
だが残念なことに、穂乃香の声はいつもの冷静さを欠いた奏には届いてはいないご様子だ。
実は、二つ目のミッションは奏の猛反対を押し切っての決行だったので至極もっともな反応である。
奏は端正な相貌に怒りと悔しさを湛えて声を苦しげに震わせつつ、穂乃香の身体をなおも自身の逞しい胸板へと強く抱き寄せ、解放する気配は微塵もない。
「ちょっ……しゃ、社長。もう大丈夫ですからっ! は、離してください! お触りは禁止だって言ったじゃないですか~!」
耳を貸さない社長の腕を何とか自身の身体から引き剥がそうと試みるも、ビクともしない。穂乃香は奏の腕の中で為す術なく途方に暮れかけていた。
***
どれほどの時間が経過しただろうか。
社長にばかり気をとられていて存在などすっかり忘れかけていた、柳本の声が突如座敷内に響き渡った。
「奏様、何と言ってお詫びしたら良いか。申し訳ございませんでした」
穂乃香がやっと解放してもらえる、そう思ったのも束の間、その期待は見事に裏切られることとなる。