紳士な俺様社長と離婚前提の契約婚!?
変わりつつあるもの

 柳本のとんでもない提案のおかげで、まだお試し期間中だというのに……。浅葱との会食があったあの夜、奏にお姫様だっこで自宅に連行されて以来、穂乃香は奏との同居生活を余儀なくされてしまっている。

 だからといって穂乃香の気持ちは変わるはずもなく、奏と結婚どころか交際する気にもなっていない。

 なので今も奏とはこれまで同様、上司と部下という関係性のままだ。

 おそらく残りの試用期間が終了し、このまま奏との一年という期限付き離婚前提の契約婚とやらに移行したからといって、穂乃香の気持ちも社長との関係性も変わったりはしないだろう。

 ――いいや、絶対にあり得ない!

 奏だって、たまたま一夜を共にした穂乃香が好みの香りを放っていただけであって、穂乃香自身を好きになったわけではないのだ。

 穂乃香よりも好みの香りを放つ女性に巡り会えば、きっと心変わりするに違いない。

 奏からどんなに情熱的な口説き文句を囁かれようとも、どんなに熱烈なアプローチを受けようとも、そんな不確かなモノ信じられるはずがない。

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