フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜

 この日も、社長との出勤時間に合わせて起床した穂乃香は、キッチンで朝食の準備を進めていた。
 
 そこに身支度を調えた奏が音もなく歩み寄ってくる。

 そうしてすっかりお馴染みとなってしまった、奏曰く朝のルーティンが繰り広げられようとしているところだ。

 穂乃香が味噌汁の味見をしようとお玉を手にしたちょうどその瞬間、穂乃香の背後をとった奏が耳元に甘く囁きかけてくる。

「おはよう、穂乃香」

 指一本触れないーーという約束通り触れてはいないが、奏の熱い吐息が耳を掠めただけで、穂乃香の身体はほんのりと熱を伴ってしまう。

 それが途轍もなく恥ずかしい。

 何より、一夜を共にしてしまったあの夜の記憶が呼び起こされてしまいそうで、それが怖くて仕方がないのだ。

「あっ、ちょっ……⁉ 危ないですから、いい加減背後に立って耳元で囁くの、やめてくださいっ!」

 そのため毎回、全身を紅潮させて大袈裟なほど肩を跳ね上げて狼狽えてしまうという、過剰な反応を示してしまうのだった。

 そんな穂乃香の反応が面白いのか、いつもは早々に切り上げるはずの奏はなおも恋人同士のような台詞を口にする。

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