フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜
そう思ったから出た言葉だったのだが、奏からは予想外な言葉が飛び出してくる。
「俺と二人では気が休まらないってことか?」
ちょうど寝室のドアに向かっていた穂乃香は奏に背を向けているため、表情は窺えない。
けれどいつもは大企業のトップらしく、泰然としているはずの奏の声が心なしかシュンと沈んでいる気がして。気になった穂乃香は応答するよりも先に振り返る。
するとつい今しがた見たとき同様、ベッドで半身を起こしこちらを見つめている奏の姿があった。
けれどその表情はまだ体調が優れないせいか、酷く悲しげで今にも泣き出してしまいそうだ。
それを目の当たりにした穂乃香の胸はツキンと鋭い痛みに襲われてしまう。
「そ、そういう意味ではありませんけど」
――いつもは憎らしいほど飄々としているくせに、不意打ちでそんな表情《かお》するなんてズルイ!
そんな表情されても気持ちには応えられないのに困る。
そう思う一方で、そうさせているのが自分なのだと思うと、心のどこかで喜んでいる自分がいるのに気づかされる。