フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜
肩を落とした穂乃香が手にしたトレイに視線を落とす様を目にした奏が、何やら思案する素振りを見せた。かと思えばズバリと核心を突いてくる。
「なら、柳本に何か言われたのか?」
意表を突かれてしまった穂乃香は、一瞬ギクリとして危うくトレイを落としそうになった。
だが体調不良の奏に余計な心配をかけるわけにはいかない、と体勢を整えつつ即刻否定する。
「そ、そういうわけでは……ない……です」
けれども嘘をつくのが苦手な穂乃香は後ろめたさも相まって、上手く立ち回れない。
そんな穂乃香の言動から、奏は柳本との間で何かあったのだと確信したらしく。いつもは穏やかで耳に心地良いはずのバリトンボイスに、有無を許さないという強い意志を籠めた揺るぎない声音で、穂乃香の心に強く訴えかけてくる。
「ウソをつくな。穂乃香と一緒に暮らすようになって、いや、出会ってからというもの、俺には穂乃香しか見えてなかったんだ。それくらいすぐにわかる」
これまでも奏には数え切れないほど好きだ何だと言われてはきたが、それは好みの香りを纏う穂乃香だからなのだと思っていた。
けれど匂い関係なく穂乃香自身を見てくれていたからこその奏からの言葉に、穂乃香の胸はきゅっと苦しいほどに締め付けられる。