フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜
――凄く嬉しいだなんて、これじゃまるで……。
穂乃香がいつしか芽生えてしまっていた何かに気づきかけていた、ちょうどそこに。
「柳本のことだから、おそらく俺のためにと余計な気を回して、生真面目な穂乃香の罪悪感でも煽ろうとでもしたんだろう」
何もかもを見透かしたような奏の言葉が届いて、思わず声を上げてしまった穂乃香の意識は完全に逸れてしまう。
「……え? そうだったんですか?」
柳本からの指摘にすっかり意気消沈してしまっていた穂乃香には、柳本の企みに気づくような余裕などなかったのだから仕方ない。
いつもは仕事モードで武装した穂乃香がこうして不意に見せる、少しばかり抜けた素の一面を垣間見た奏は心底嬉しそうにふっと微笑を漏らす。そうしていつもの耳に心地良いバリトンボイスを優しく甘やかに響かせる。
「まぁ、そういうことだから気にするな」
その優しい声音にうっかり「はい」なんて言って素直に頷きそうになった穂乃香だったけれど、ここぞとばかりに頑固さがひょっこりと顔を出す。
「でも……口では嫌だ何だと言いながら、心のどこかでは優越感に浸ってたんですから……自業自得です」
そればかりかついうっかり余計なモノまで口走ってしまうのだった。