おともだち

栄司

 仁科多江からは直ぐに連絡があった。

 早々に俺に会いたくなった……わけではないだろうな。
『今週どこかで会える? 』どこかって家に呼んでくれないあたり、おおよそ“やっぱりこの関係は……”とかなんとか、そんなんだろうな。

 さて、どうすっかな。どうしてやろうかな。ま、逃す気はないけどな、ふつふつと闘志が湧いてくる。

『じゃあ今週、仕事が終わるの早い日会おうか。急でもいいよ』

 返信すると、さっそく翌日には会うことになって、仁科さんは案の定
「あの件だけど……」「やっぱり……」「でも……」
 とか言い出したから
「俺じゃ不足だってこと? 」
 とにかく畳み込むことにした。
「え、そんなんじゃないよ。私がセフレにしてもらうならともかく、私が宮沢くんをセフレにするなんてすごく贅沢な使い方してるのわかってる。宮沢くんはセフレなんていらないってことも。だから、もったいないし、ちゃんとした彼女作ったほうがいいんじゃないかなって」
「あー、ずっとって言われると困るけど3か月だしな。この3か月は普通に生きてても彼女出来ないと思うし、俺にとってはゆとり期間だからいいよ」
「じゃあ、契約は3か月だけど、宮沢くんはもし好きな人とか告白されたりして受けることになれば破棄してくれていいよ」
「あー、はいはい。あっという間だぜ、3か月なんて。その間、俺に何回お呼びがかかるかわかんないし、いいってば」
「あ、そっか。そうだよね。じゃあさ、」
「いいって。適当で。俺らはセフレ。気軽な関係を選んでの結果だろ? 考えすぎてどうすんの」
「でも、それじゃ、宮沢くんにメリットが」
「ある」
「あるの? 」

 俺はピースサインを仁科さんの目の前に掲げた。
「2回。それでも仁科さんが俺に悪いと思うなら。2回だけ、俺の呼び出しにも応じてよ」
 
 男側になんのデメリットもないこの関係を申し訳なく思うほど、彼女は危なっかしい。いや、マジで何言ってんの。会社では大人っぽい常識ある人で、こうしてプライベート、ことさら男女のことになると、何だろう。どこか幼い危うさがある。
< 21 / 40 >

この作品をシェア

pagetop