おともだち
 俺にメリットはあるんだな、これ。3か月拘束できるってこと。プライベートで会えること。家に行けること。
 恋愛経験も少ないわけだし。この3か月で惚れさせる。余裕でいけんじゃね?

「今日は、この後どうする? 」

 含みを持たせて聞いてみると、彼女は思惑通り顔を赤くした。
「今日は、明日仕事だし、帰るね」
「はは。そうだな」

 スッと彼女の頬に触れると、唇に目を落とす。ぎゅっと目を閉じた彼女の額に唇を当てるとまだ目を閉じてる彼女の鼻先をはじいてやった。

「いたっ」
「今日は(ここ)で。……送ろうか? 」
「だ、大丈夫」
「そっか。じゃあ、また連絡して」

 動揺して、直ぐに去る彼女に満足しながら、まずまずなんじゃないかと自負する。おっかし。道で目閉じてんじゃねーよ。セフレが街中で堂々とキスするかっての。

 そうは言っても、惜しかったな。彼女の唇を思い出し、んんっと咳ばらいをする。

「なんて、な。3ヶ月後、覚えとけよ」
 焦りは禁物だ。本当にセフレで終わらされたらたまったもんじゃない。
 
 ただ、待ちの姿勢はなかなかに辛い。たった2回の札をすぐに使うわけにも行かないし。時々“みんなで”行ってる食事“を二人で”にシフトするしかないか。

 彼女と恋人になるには、彼女が恋人ではなくセフレを求めるようになった経緯を知る必要がある。彼女の思うところの恋人にはあってセフレにはない部分。それがしんどくてセフレ関係を思い立ったわけだ。ほぼ恋人と変わらない信頼関係のあるセフレ……。

 何だかおかしくて、少し笑った後、真顔になった。

 結局、彼女は恋愛に嫌気がさしたわけじゃない。むしろ必要としてるんじゃないかと思う。

 じゃあ、十分可能性はある。今は俺が一番彼女の恋に近い位置にいる。

 初めてのパターンだったけど、俺は思ったより臨機応変に受け入れられるんだと驚いた。あと、すごく負けず嫌いだ。このままでは引けない。

 俺は彼女が好きだったけど、見切り発車的な告白だったと思う。今は、今の気持ちは……。どうだろ。単にむきになっているのかもしれない。
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