おともだち

栄司

 動物園なんて、いつぶりだ?
 この前、動画で流れてた動物を見て、顔を緩ませたのを見逃さなかったからだ。動物、好きなんだなって。
 
 この年になれば恋人でもいなけりゃ行かない場所だ。動物園も水族館も。昼食って、園内回ればそれなりにいい時間になるだろうと思う。そこから晩飯はどこかで食うか、一緒に作ってもいいかー。また家に入れてくれんのかな。

 きっと、1日があっという間だろうな。

 休日の朝から会う。ってこれ、向こうはしんどくないのかな、そう気が付いたのは当日の朝だった。そうだ、そうだよ。俺は早く会いたくて張り切ったけど、すでにいいペースで会っていて今回みたいに1日ってなると次回までに間隔開く可能性はあるな。夜だけにすべきだったか。動きやすい服装とは伝えたが、行先が動物園だって伝えた方が良かったなと家を出てから思った。

 動きやすい格好でと伝えても、高いヒールや本人の趣味趣向を優先した格好で来られたことがある。そうなれば、制限されることも出てくる。それはそれで、相手に合わせてて動けばいいのだから。
 
 仁科さんはスニーカー、少し足首を出したパンツにシンプルなTシャツ、そこにミントグリーンのカーディガンを羽織っていた。いい意味で気取らない、今日の行先には完璧な格好で、彼女がいつもこういう格好ではない事を知ってる俺はなんだか嬉しくなった。彼女とは純粋に楽しく過ごせそうだと。

 半面、そこまで気合を入れない相手なのかと深読みして落ち込む矛盾。完全に情緒が怪しい自覚はある。なんせ、初めてのパターンなもんで。

 横で慎ましく座ってる姿を見ると、まぁいいかという気持ちになる。いっか、どんな格好でも可愛いって思っちゃうわ、俺……。

 「そういう、カジュアルな格好もいいね」

 いつもの服も、好きだけど。心の中で付け加えた。
< 44 / 147 >

この作品をシェア

pagetop