おともだち
「兄たちが、私のために何日も前から私を喜ばせるために準備をしていて、プレゼントはもう何か見えちゃってるし、そのうち誰が一番私を喜ばせるか喧嘩まで始まるし、嬉しいけど、喜ばなきゃ、喜ばなきゃってプレッシャーがすごくて。上手く喜べるかな、私のリアクション一つで相手がしょんぼりしてしまう。それが……いつのまにかしんどくなっちゃったな。もちろん、気持ちは嬉しい。嬉しいんだよ? けど、素直に嬉しいと思えない自分にも嫌気がさして、それでプレゼントよりも相手の喜ぶリアクションにばかり気持ちが行ってしまう。私、うまく喜べるかなって。どのプレゼントにも同じように喜べたかなって」

「それは、何となくわかるな。男の子3人の後の女の子は両親も喜んだだろうし、お兄さんたちの仁科さんに対しての可愛がりかたも尋常じゃないって感じかな? 」
「そうなんだよ、兄たちに比べて過保護に甘やかされて気がする。何かと、注目……監視されてる気がして。親の目が5人分ある感じ。自分でやってみたい、一人で! って何度思ったことか」
「良くも悪くも関心の目を向けられすぎるってことか」
「そ、そうだ、そうなの! 」

 仁科さんは腑に落ちたように同意した。

「だからマメすぎる彼氏や、構い過ぎる彼氏が窮屈で適度にほっといて欲しいんだ」
「……あ、そっか……」
 仁科さんは納得したようにもう一度「そっか……」と呟いた。
 
 俺も妙に納得した。構われ過ぎるっていうのも、辛いもんだよな、きっと。でも、と思い直す。構われ、注目され、気にかけてもらう仁科さんにとって、ある程度気にかけてもらえることは当たり前のことで、もしそうじゃなければ、それはそれで違和感というか、寂しいと思うんじゃないか。

 だから、セフレ……と思ったんじゃないか。欲しいのは親兄弟では埋められない男の部分。もちろん身体だけじゃなく、気持ち、恋心とかそんなん。

 どこかにこの関係を脱する糸口は無いかと思索する。何とか、ならないか。
 
 
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