おともだち
多江
栄司の家では、促されるままに中に入り、あんまり見てはだめかなと、かと言って視線をどこに置いていいかわからず戸惑っていた。友人なら、恋人なら、同僚なら、それなりの行動ってあるだろうけど、過去に経験のない男性との関係性に何が正解かわからない。
私が座るのは栄司の横か、向かいか、そんなこと事まで迷って彼に伺うように視線を走らせる。その都度栄司は「楽にして」と笑った。
結局ごく近い隣に誘われ、おずおずとそこに腰を下ろした。食事が終わったら、するんだろうな。そう考えると……緊張もしてくるし、そういう関係を望んだのに緊張してどうすんだって自分に言い聞かせなくちゃならなくて、息の仕方から変になりそうだ。
栄司は私を座らせて、買って来た食事やお酒を準備してくれている。
シンプルな部屋は必要最低限の物しか置いていない感じがする。当たり前だけど、兄たちともまた違う部屋だ。
淡いグレーをベースに部屋が作られていて私の座るファブリックのソファの前にはオークのテーブルが置かれていた。オットマンと組み合わせて二人用になるソファは背もたれのある方を勧められたままそれに従い、栄司の行動に手伝うべきか立ち上がろうとしては止められてしまった。
一度、ふう、と大きく息を吐くと、料理を運んできた栄司が笑った。
「楽にしなって。気を使わなくていいように家にしたんだろ」
「うん」
「ついでに、気を使わないために、多江が“今の関係”を選んだんだからな」
「そう、だね」
そうだった。私が、決めたことで、栄司は不本意ながらこの関係を受け入れてくれたんだった。私はもう一度、ふう、と息を吐いた。今度は覚悟を決める呼吸。気を抜くのに覚悟が必要なのも変だけど、一旦落ち着こうと思う。
私が座るのは栄司の横か、向かいか、そんなこと事まで迷って彼に伺うように視線を走らせる。その都度栄司は「楽にして」と笑った。
結局ごく近い隣に誘われ、おずおずとそこに腰を下ろした。食事が終わったら、するんだろうな。そう考えると……緊張もしてくるし、そういう関係を望んだのに緊張してどうすんだって自分に言い聞かせなくちゃならなくて、息の仕方から変になりそうだ。
栄司は私を座らせて、買って来た食事やお酒を準備してくれている。
シンプルな部屋は必要最低限の物しか置いていない感じがする。当たり前だけど、兄たちともまた違う部屋だ。
淡いグレーをベースに部屋が作られていて私の座るファブリックのソファの前にはオークのテーブルが置かれていた。オットマンと組み合わせて二人用になるソファは背もたれのある方を勧められたままそれに従い、栄司の行動に手伝うべきか立ち上がろうとしては止められてしまった。
一度、ふう、と大きく息を吐くと、料理を運んできた栄司が笑った。
「楽にしなって。気を使わなくていいように家にしたんだろ」
「うん」
「ついでに、気を使わないために、多江が“今の関係”を選んだんだからな」
「そう、だね」
そうだった。私が、決めたことで、栄司は不本意ながらこの関係を受け入れてくれたんだった。私はもう一度、ふう、と息を吐いた。今度は覚悟を決める呼吸。気を抜くのに覚悟が必要なのも変だけど、一旦落ち着こうと思う。