おともだち
 ああ、栄司が何もしないのって、そうだったんだ。セフレを求めた私を受け入れてくれたけど、それはちゃんと私のことを分析して考えてくれてたんだってこと……。
 本当に必要なのはセフレか?ってこと。男側にとって都合のいい存在にならないように。わかってて私にわからせるために待っていてくれたの……?

「ごめん。そうかもしれない」
「うん。まあ、座って」

 私たちはフロアソファに座り直した。

「栄司にメリット、無かったね」
「いや、待て待て。落ち込むなよ。あと、男にとって……、いや、俺にとって多江とセックスするのはメリットではない。違うな。これも誤解が生じそうだけど、なんて言うかな……メリットがあるから引き受けたわけじゃないっていうか。ほら、友達とか恋人でもメリットがあるから付き合うわけじゃないだろ。……楽しい。俺、多江といるの楽しいから引き受けたんだよ。それだけ。俺も異性の友達出来たこと無いから新鮮だし」
「そう……いいのかな」
 栄司は腕組みをし、片眉を上げると
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 と言い切った。あまりのことにきょとんとしてしまう。えっ、と……?

 栄司はふっと笑って私の頭をポンポンと優しく撫でた。

 ……気持ちいい。確かに栄司はいつも楽しそうで、それならこの関係もいいのかもしれない。私が目を細めると栄司は嬉しそうにくしゃりと笑った。

 ――好き。栄司のこうやって笑った顔が好き。栄司の手に自分の手を重ねた。

「なにー? 」

 栄司はそう言ってまた笑う。胸がぎゅぎゅっと痛い。栄司の笑った顔が好きだ。そう思うと胸がますます苦しくなって言いようのない恐怖が襲って来た。この関係はいつまで?いつまで栄司は私に笑ってくれる?怖い。無理だ。怖い……!

 栄司は笑ってくれなくなるかもしれない。……私が栄司を好きだって言ったら――。

 それが怖くなってしまった。
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