おともだち
 ――長期戦覚悟。

 それは、ある条件下に限定されると気づいた。

 辰巳主任は既婚者で愛妻家。多江は倫理観がしっかりしてる(セフレとか言い出す突飛さはあるが)からどうこうなることはない。
 
 
 ――だけど、他の男はどうだろう。

『俺と契約中は他のセフレは作らないで』とは言った。そんなに性欲強くないから大丈夫って返事だったと思う。性欲はね。そういや以前、セフレを求めてるとか言いながら『性欲強くない』とか言ってたから俺も『性欲強くない』って言い返したつもりがきょとんとしてるし。あいつ絶対自分が先に言ったこと忘れてやがるんだぜ。おかげで()()()()だって言う機会逃したし。はぁ、急に“『性欲強くない』はそんなことない”とも言えないし。失敗したな。ブツブツ……。いや、そんなことより!
 
 気持ちが動くかもしんないじゃん、てこと。何で“他の男と二人で会わないで”とか“他の男の事を見るな”とかにしなかったんだろ、俺。多江は結構モテる。

 “彼氏は? ”と聞かれたら“いない”と答えるだろう。そりゃそうだ。“彼氏はいないけど、セフレはいます”などと言えるわけはないのだから。

 ライバルが現れた場合――のんびりもしてられない。
 そう気づいてしまった。

 多江、本当はセフレじゃなくて普通に恋人が欲しいんじゃないかなって思う。構い過ぎず、お互い自分の時間もしっかり維持できる自立した相手なら上手くやっていけると思う。

 俺な、俺。それが俺であるように長期戦て言ってんのに、かっさらわれてる場合じゃない。
 誰かに気持ちが動いてしまえば、俺たちの関係なんてすぐに終わってしまう。俺を好きになるまでの間、()()()()()()()()()()()だけの、そんな策しかないなんて情けない限りだ。

 何か考えなきゃな。気持ちだけが焦る。もういっそ、全くの他人に戻れないように身体だけでも関係をもってやろうかと思ったが、得策ではなさそうだ。どうすっかなぁ。

 嫌な予感って何でか当たるものだから――……。
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