おともだち
 企画部って、栄司のマーケティング部とわりと接触あるんだ――……。

 ランチの帰り道、また栄司の隣を歩く彼女を見ていたら、私の隣を歩く三上さんが不意に吹き出した。彼女の視線は前の女性――栄司に一生懸命話しかける小柴さんに注がれていて、目を向けた私に気づくと三上さんは
「いや、若いっていいなって。あんなわかりやすくても微笑ましいってだけ。ごめんね、仁科さん。大目に見てやって」
「……いえ、私は……。そっか、小柴さんて宮沢くんのこと……」
「ううん。そこまでじゃないだろうけど、宮沢くんて別世界というか高嶺の花みなたいなとこあったけど、意外に気さくな人だってわかって相手してくれるのが嬉しいんだと思う。彼女、ちょっとミーハーなとこあるから」
 
 私にはどうこう言える権利はないし、もし小柴さんの気持ちがミーハーなものではなかったとしても黙って見ているしかない。栄司が決めることだから。
 キラキラした目で栄司を見つめる小柴さんに栄司は頷き笑顔を返している。状況を知らないと仲が良さそうに見える。

「そう、ですか。可愛いですね」

 そう言うのが精いっぱいだった。

「宮沢くんもまんざらでもないのかな。もっとクールな感じかと思ったけど」

 そう言った三上さんの声が遠くで聞こえる。もはや相槌もうまく打てずに顔がひきつってしまう。

「ごめん、若いって仁科さんも十分若いんだった」
「あはは、いいですよ、そんなの」

 違うところで気を使われてしまった。そうだよ、でも奈子はそろそろ結婚を視野に入れた恋人が欲しいって言ってたし、小柴さんだってそうなのかもしれない。栄司だって本来は正当な付き合いしかしない人だ。単に私が何で『セフレ』を必要としたのか解明するのにつき合ってくれてるだけ。……そうなら、栄司はもう関係の更新は望まないかもしれないな。

 ちゃんとした恋人……かぁ。
 何かの拍子に横並びが崩れたタイミング、ふと声をかけられて振り返った。
 
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