おともだち
加賀美の横にはパンツスーツの女性がいて首を傾げている。恐らく、俺の後ろで三上さんも小柴さんも同じ顔をしているだろう。
「学生時代の友人なんだ」
加賀美が同僚だろうその女性に説明し
「すごい偶然だな。俺、今日仕事でたまたまこの辺いて、えっと、今時間ないから……急だけど今夜空いてない? せっかくだし」
加賀美はそう言って爽やかに笑った。
「あ……」
「悪い。今日俺予定あるんだ」
「あ、ああ。えー……じゃあ、仁科。また連絡する」
「……うん。ごめんね、また」
加賀美は横の女性を待たせているのを悪いと思ったのか名残惜しそうに挨拶もそこそこに背を向けた。
「あ、そうだ。仁科」
加賀美が多江を呼び止め、一歩戻る。多江に近づくと
「今、彼氏いる? 」
「…………いない」
「よかった。じゃあ」
三上さんと小柴さんに加賀美の言葉は聞こえなかっただろう。加賀美の事をそう掘り下げることなく会社へと向かう。
「こんな所で偶然、お知合いですか? 」
小柴さんが尋ねてくるのに、軽くなんてことないように答える。
「そう……なんだ。たまたま。俺も仁科さんも知り合いって言う」
「へええ、そんなことあるんですね! 」
「ほんとだよ」
こんなことがあるなんて。
わかってた。加賀美が『今夜空いてない? 』って聞いたのは俺たちじゃなくて多江にだって。それを俺にも言われたと思ったかのように装って遮った。それと、『また連絡する』って連絡先を聞かずに別れたってことは……。 二人は、お互いの連絡先を知ってるってことだ。
「かっこいい人でしたね。いいなー、私同級生にかっこいい人なんていたことない」
「あー、はは。確かに、あいつ昔からモテてたな」
……多江に、だけどさ。うんざりしてため息が出そうだ。
「学生時代の友人なんだ」
加賀美が同僚だろうその女性に説明し
「すごい偶然だな。俺、今日仕事でたまたまこの辺いて、えっと、今時間ないから……急だけど今夜空いてない? せっかくだし」
加賀美はそう言って爽やかに笑った。
「あ……」
「悪い。今日俺予定あるんだ」
「あ、ああ。えー……じゃあ、仁科。また連絡する」
「……うん。ごめんね、また」
加賀美は横の女性を待たせているのを悪いと思ったのか名残惜しそうに挨拶もそこそこに背を向けた。
「あ、そうだ。仁科」
加賀美が多江を呼び止め、一歩戻る。多江に近づくと
「今、彼氏いる? 」
「…………いない」
「よかった。じゃあ」
三上さんと小柴さんに加賀美の言葉は聞こえなかっただろう。加賀美の事をそう掘り下げることなく会社へと向かう。
「こんな所で偶然、お知合いですか? 」
小柴さんが尋ねてくるのに、軽くなんてことないように答える。
「そう……なんだ。たまたま。俺も仁科さんも知り合いって言う」
「へええ、そんなことあるんですね! 」
「ほんとだよ」
こんなことがあるなんて。
わかってた。加賀美が『今夜空いてない? 』って聞いたのは俺たちじゃなくて多江にだって。それを俺にも言われたと思ったかのように装って遮った。それと、『また連絡する』って連絡先を聞かずに別れたってことは……。 二人は、お互いの連絡先を知ってるってことだ。
「かっこいい人でしたね。いいなー、私同級生にかっこいい人なんていたことない」
「あー、はは。確かに、あいつ昔からモテてたな」
……多江に、だけどさ。うんざりしてため息が出そうだ。