おともだち
 スマホが震える振動が伝わって来て、自分のではないと確認すると
「多江、スマホ鳴ってない? 」

 そう声をかけた。

「あ、多分メッセージだと思う」

 呼び出し音の短さでそう判断したのか多江は確認する素振りも無かった。
「いいよ、見て」
 俺に遠慮したのだろう多江に促すと、多江はそう、と慌てることなくスマホをバッグから取り出した。

「あっ」
 と小さく声をあげる。隣に座っているせいで画面をのぞき込めば見えてしまう位置にはなるが、見るのはどうかと躊躇する。多江は届いたメッセージに返事をすることもなくバッグにしまった。

「……いいの、返事」
 何となく予感はして、誰から?と聞きたいのを飲み込む。

「うん。加賀美君からだった。ふふ、懐かしいねってことで。後で返信する」
「……いいよ。今しな。まだ食事も来てないし」
「え、そう? 」

 多江は軽い躊躇ののち、加賀美に何か返信し、その後スマホは何度か震え、やがて静かになるとバッグにしまった。

 二人がどんなやりとりをしたのかわからない。けど、時間的に仕事が終わってすぐにメッセージを送って来てるだろうことから、加賀美も今日の再開を『じゃあ』で終わらせたくないってことだろう。だいたい加賀美の奴!俺の連絡先は知らないのに!何で聞いて来ないんだよ!俺とだって再会だろうに!連絡先くらい、聞いて来いよ!

「加賀美、何て」
「え、うん。また食事にでも行こうって」
「へえ」
「加賀美くんがうちの近くで仕事の時に予定合わせてもいいね」
「……うん? 」
「え? 栄司も来るでしょ? 」
「加賀美が、俺もって言ったのか? 」
「……そうだけど」
「おー、うん、おお」
「何それ」

 ……イイ奴じゃん、加賀美。俺も?いや、適当に俺の予定つかない時に二人で、とか言い出しそうだな。まだ気は抜けない。
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