おともだち
多江
夜に栄司からの誘いが無かったらもっと気持ちが沈んでいただろう。栄司が声をかけてくれたお陰でいくらか心は軽くなった。
――心が沈むのは昼休みに栄司と二人でランチに行けなかったからじゃない。小柴さんの視線、表情……。小柴さんに向ける栄司の表情はきっと普段私に向けるものと同じ。私も小柴さんも栄司にとってはそうかわらない存在なんだってこと。
『契約は3か月だけど、宮沢くんはもし好きな人とか告白されたりして受けることになれば破棄してくれていいよ』
あの時、軽く言ってしまった言葉が現実になるかもしれない。
『あっという間だぜ、3か月なんて。その間、俺に何回お呼びがかかるかわかんないし、いいってば』
栄司の言う通りあっという間だった。だけど、気持ちが動くのには十分だった。栄司の気持ちが変わるのだってあっという間なはず。
はぁ、とデスクでため息を吐いた。
加賀美くんに会ったあの時、隣にいた若い女の子だって栄司を見るとハッとなって目が釘付けになっていた。誰がどう見たって栄司は見とれてしまうくらいの人で、気さくで、優しくて、――彼女がいない。
栄司は恋人はいるのかと尋ねられたらきっと“いない”と答えるだろう。だっていないのだから。わざわざ自分からフリー宣言なんてしないだろうけど、聞かれたら答えるだろう。少し前の栄司なら恋人の有無なんて気軽に尋ねる人もいなかっただろうに――。
栄司は正面から向けられた好意に何を思うんだろう。
今日はわざわざ用事があると加賀美くんの誘いを断って私と会う目的は何だろう。どうか、深い意味はありませんように、そう祈るような気持ちだった。
――心が沈むのは昼休みに栄司と二人でランチに行けなかったからじゃない。小柴さんの視線、表情……。小柴さんに向ける栄司の表情はきっと普段私に向けるものと同じ。私も小柴さんも栄司にとってはそうかわらない存在なんだってこと。
『契約は3か月だけど、宮沢くんはもし好きな人とか告白されたりして受けることになれば破棄してくれていいよ』
あの時、軽く言ってしまった言葉が現実になるかもしれない。
『あっという間だぜ、3か月なんて。その間、俺に何回お呼びがかかるかわかんないし、いいってば』
栄司の言う通りあっという間だった。だけど、気持ちが動くのには十分だった。栄司の気持ちが変わるのだってあっという間なはず。
はぁ、とデスクでため息を吐いた。
加賀美くんに会ったあの時、隣にいた若い女の子だって栄司を見るとハッとなって目が釘付けになっていた。誰がどう見たって栄司は見とれてしまうくらいの人で、気さくで、優しくて、――彼女がいない。
栄司は恋人はいるのかと尋ねられたらきっと“いない”と答えるだろう。だっていないのだから。わざわざ自分からフリー宣言なんてしないだろうけど、聞かれたら答えるだろう。少し前の栄司なら恋人の有無なんて気軽に尋ねる人もいなかっただろうに――。
栄司は正面から向けられた好意に何を思うんだろう。
今日はわざわざ用事があると加賀美くんの誘いを断って私と会う目的は何だろう。どうか、深い意味はありませんように、そう祈るような気持ちだった。