チカ先輩のお気に入り。
階段を登って廊下を走る。
逆側の階段から下りて、玄関に……っ。
後ろの足音がどんどん近づいてきているように思えて。
チカ先輩と知り合った初めの頃、一回だけ逃げ出したことがあったなあ。
その時運悪く夏目先輩にぶつかっちゃって、追いつかれちゃったんだけど。
でもその時は……こうやって走って追いかけてこなかった。
なんで今、昔のことが思い出されるの……っ。
また階段に近づいてきて下に降りれると思った時。
左手が、パシッと後ろから掴まれて後ろに引っ張られる。
強制的に後ろを向かされて、抵抗もできずチカ先輩に顔を晒す。
ボロボロと、流れて溢れる涙でチカ先輩の顔が滲む。
滲んでいてもわかる……焦ったような怒ったような表情。
でもそれは、私の顔を見て驚きに変わった。
「……雪桜ちゃん」
「……っ、うぅ……っやだぁ……っ」
「……なんで泣くの」