冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心

学校での上條君は常時クールで、女子に対しても塩対応だけど。
『バレンタイン』という特別な日だからこそ、もしかしたら……受け取って貰えるかも?と淡い期待を抱く女子は後を絶たない。

「スイーツならどういうのが好みなの?」
「………」
「ねぇ、上條くんってばっ」
「うっっっせぇなッ!話しかけんなっ」
「きゃぁぁあっ、目が合っちゃったぁ♪」
「廉くん、私も~!こっち見てぇ~?」
「ぁ゛あ゛ッ?!」

廉の片眉がぴくっと反応を示し、額に青筋が浮き立ったように見えるほど、表情から苛立ちが窺える。

「勝手に人の下の名前を呼ぶんじゃねぇッ!っつーか、どけ。これ以上話しかけたら、ストーカー被害で訴えんぞ」

踵を返し歩き出し、前のドアではなく後ろのドアから教室に入り、ピシャっとドアを閉めた。
無言で自席に着いた彼を視線で追い、ホッと胸を撫で下ろす。

彼が、例え『バレンタイン』という特別な日であっても、いつもと態度を変えそうになくて安心する。

少し前から、いや、だいぶ前から自覚してる。
私、……上條君が好き。

恋愛とは無縁で生きて来たし、正直今でもよく分かってない。
だけど、何度となく彼の素直な気持ちを伝えられて、少しずつ自分の気持ちもはっきりして来た。

もちろん最初は冗談だとか揶揄いなのかな?と思ったけれど。
メールでも電話でも、もちろん学校でも。
いつだって彼は真摯に向き合ってくれている。

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