結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
「会長、俺の提案書を読んでくれたって」

「そうなんだ」

提案書とは育児中社員を抱える部署の負担軽減……要するに、私および私と同じ状況になっている、これからなるかもしれない社員の負担を減らそうというヤツだ。
矢崎くんは育児中社員がいる、過去にいた部署から仕事の合間に丁寧にヒアリングし、改善案をまとめていた。

「そうなんだって、他人事みたいに」

不満そうに彼が、少し唇を尖らせる。

「あ、いや。
そんなわけじゃないんだけど……」

それに笑みを貼り付けて取り繕った。
矢崎くんには悪いが、これで会社が変わるなんてあまり期待していない。
私だって何度も、上司に訴えたのだ。
でも、なにも変わらなかった。
もうすっかり諦めてしまうほど、私はこの件に関して疲れ切っていたのだ。

「まあ、純華の気持ちもわかるけど」

私の気持ちを表すがごとく、はぁっと短く彼がため息を落とす。

「でも、産休・育休中の人員不足はわかっていたが、育児中の社員のフォローがこんなに大変だなんて盲点だったと、言っていたぞ」

「ふぅん、そうなんだ」

「近いうちに純華にも話が聞きたいって言ってたし、絶対変わるって」

力強く矢崎くんが頷く。
それで、信じようって気持ちになるのはやっぱり愛の力?

「だったら、いいな」
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