結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
第六章 終わりへ向かっていく時間
最後、私が熱中症で倒れると実に不甲斐ない結果で終わったものの、イベント自体は概ね成功だった。
会長から呼ばれ、ママさん社員のフォローの現状についても聞かれた。
仕事が、いい方向へ動いているのを実感する。
でもきっと、私がこの会社にいるのはあと少しだ。
矢崎くんと離婚となれば、もうここにはいられない。

「純華ー、終わったかー?」

「もう終わるー」

廊下に顔を出し、矢崎くんに答える。
イベント翌週、予定どおり私たちは新居に引っ越しした。
といっても、彼が荷造りから荷解きまでのフルサービスで手配したので、やることはほとんどない。

「なあ。
やっぱり家具も家電も全部買い替えたほうが……」

「うっさい」

「んんっ!」

文句を言う矢崎くんの唇を摘まんで封じてやる。

「拘りの家を建てたときに、拘りの家具を揃えるって決めたでしょ?」

引っ越しに伴い、家具家電の買い替えで矢崎くんとは揉めた。
だって、全部買い替えようとか言うんだよ?
もうかなり使い込んでいるとかならまだしも、矢崎くんちの冷蔵庫と洗濯機は買い替えたばかりだというし。
どうせ、家を建てたらまた買い替えるとか言い出すのだ。
なら、今までのをそれまでは使えばいい。
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