結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
それに新居での生活は長く続かないのだから、無駄なお金を使わせたくなかった。

「明日は犬、見に行くんだっけ?」

「そう」

新居初日の晩ごはんはピザを取った。
ほとんど引っ越し業者任せといっても、やはり疲れている。

「楽しみだね、豆柴」

「そうだな」

楽しみで仕方ないのか、彼はもう今からそわそわしっぱなしだ。
大型犬は散歩のときなどに私の手に余るかもと、避けてもらった。
矢崎くんからも異存はなかったし。
一緒に見た画像の黒柴は凄く可愛くて、私も楽しみだ。
それに私も、早く犬をお迎えしたかった。
犬がいれば私がいなくなっても、矢崎くんが淋しい思いをしないで済むかもしれないから。



「ほら、パパは忙しいんだから、あっちでママと遊ぼうねー」

矢崎くんの脚に絡む、仔犬を抱き上げる。

「くぅーん」

仔犬が淋しそうに声を上げ申し訳なくなったが、そこは心を鬼にした。
早く行ってと、矢崎くんに目配せをする。

「すまん、イブキ!
仕事が片付いたら、存分に遊んでやるからなー!」

涙を堪えるように、彼はリビングを出ていった。
そんな大げさな、なんて笑ってしまったが仕方ない。

「さて、イブキ。
なにして遊ぼうか」

「きゅぅん」

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