結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
目尻が下がり、眼鏡の陰に笑いじわがのぞく。
私の大好きな、矢崎くんの笑顔。
それが見られて、私も嬉しかった。



契約の日、矢崎くんは私が選んだネクタイに、それよりワントーン色の濃い、ネイビーの三つ揃えだった。

「どうだ?」

私と目があい、彼がわざとらしくポーズを決めてみせる。

「格好よくて惚れ直しちゃう」

これは正直な感想だ。
いつもよりも気合いが入っているからか、今日の矢崎くんは普段よりも数倍素敵だ。

「よしっ、純華が格好いいって言ってくれたから、頑張れる!」

なんか滅茶苦茶気合い入っているけれど、そんなに?
私には理解できないが、彼の役に立ったんならいいか。
……あ、そうだ。
これだけでこんなに喜んでくれるなら、あれもやる気になるのかな……?

ちょいちょいと手招きしたら、矢崎くんは不思議そうだけれどすぐに寄ってきた。
しかし彼と私の身長差では、背伸びしても届くか怪しい。
さらに手招きすると、顔を近づけてくれた。
腕を伸ばしてその首に回し、引き寄せるようにしながら背伸びする。
なにが起こっているのかわかっていない彼にかまわず、唇を重ねた。

「……頑張ってね」

唇を離し、眼鏡越しに見つめあったままにっこりと笑う。
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