結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
家族についてまったく聞かれなかったのもあるが、このまま知られずにいられるんじゃないか、そんな期待が首をもたげてくる。
そもそも、そのために両親は離婚したのだ。
もしかして私は、死がふたりを分かつまで紘希と一緒にいられる?
そう、期待したが――。



「瑞木係長。
オンゾーシが呼んでるけど、なんかしたの?」

会長とのランチの翌週、いつもどおり仕事をしていたら同僚男性から声をかけられた。

「御曹司が……?」

「そう、オンゾーシが」

同僚のいう御曹司とは、紘希のことではない。
薄々、彼が会長の身内だっていうのはもうバレているが。
この場合は、子会社の、鏑木社長の息子の正俊(まさとし)を指す。
当人としてはそう呼ばれてちやほやされていると思っているみたいだが、大多数はカタカナのオンゾーシ呼びで彼を疎んじていた。

「それともあれか?
矢崎課長の件であたりにきたか。
なんにしろ、ご愁傷様」

「は、はははは」

慰めるように彼が私の肩を叩く。
それに引き攣った笑顔を向けた。

「失礼します」

指定されたミーティング室へと入った途端、今年入ってきた女の子と目があった。
正俊の隣に座らせられていた彼女は、涙の浮かぶ目で縋るように私を見た。

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