結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
「いいよ」

矢崎くんも承知してくれてほっとした。

お店に入り、矢崎くんはハイボール、私はウーロン茶を注文した。

「飲まないのか?」

「あー、うん」

曖昧に笑って言葉を濁す。
酔って昨日みたいに勢いで変な決断をしては困る。

「こんなに残業して、規定は大丈夫なのか?」

すぐに届いたハイボールを飲みながら、矢崎くんは心配そうだ。

「……はっきり言って、ヤバい」

もうずっと、上司と人事からこの件では注意を受けっぱなしだ。
かといって残業、休日出勤しないように注意するだけで、一向に解決案は考えてくれないが。

「だよなー。
でも俺から口出しできないし……」

はぁーっと苦悩の濃いため息が矢崎くんの口から落ちる。
他の部の一課長から進言されたところで、部外者がなにをと一笑されるのがオチだろう。

「今の仕事が上手くいったらいろいろ口出しできるようになると思うけど、それまでに純華が倒れかねないもんな……」

また、矢崎くんの口からため息が落ちていく。

「その気持ちだけでもありがたいよ」

まわりはしばらくの我慢だからとしか言わないが、彼はこうやって私を気遣ってくれる。
それだけで嬉しかった。
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