結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
「いや。
これは会社にとって大問題だ。
しばらく様子見てたけど、全然改善しないし。
純華ももう、限界だろ?
会長に言うよ。
ちょっとやり方が汚いけどな」

自嘲するように矢崎くんは笑っているけれど。

「え、いいよ。
そんなことして矢崎くんの立場が悪くなったらヤだし」

そういう越権行為というか密告というかいうのをやって彼が他の役員から睨まれたりしたら、申し訳なさすぎる。

「純華は優しいなー」

私の心配などわからないのか、矢崎くんは実に締まらない顔でへらっと嬉しそうに笑った。

「大丈夫だ。
問題提起から解決案までセットで提案すれば、将来の経営者テストとして見てくれるからな。
それにうちには目安箱制度もあるだろ。
あれだ」

笑って彼は唐揚げを食べているが、そんなもんなのかな。
ちなみに目安箱制度とは、役員に直、誰でも意見を上げられる制度だ。
江戸時代の制度から通称で目安箱と呼ばれているが、正式名称は別にある。
一階ロビーにコーヒーショップが入ったのも、このシステムに提案があったかららしい。

「じゃあ……。
よろしくお願いします」

改めて正座をし、矢崎くんに頭を下げる。
なにはともあれ、仕事の負担が減れば嬉しいし。

「よせよ。
俺は純華のためだったらなんだってするよ?
それにこれは、会社の問題でもあるからな」

重く彼が頷く。
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