結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
なんて、気軽な気分で入ったものの、数分後には後悔していた。

「ええっと……」

「下見だよ、下見」

矢崎くんが私を連れてきたのは、宝飾店だった。

「下見ってさ……」

明日、母に会うまではどうなるのかわからないのだ。
それに、矢崎くんのご両親はわからないが、祖父――会長から許しがもらえるとは思えない。
だからこれ――結婚指環は買わずに終わらせようと思っていたのに。

「今日買うわけじゃないからいいだろ」

「そう、だね」

曖昧に笑い、一緒にショーケースを見る。
本心では彼との結婚指環は欲しい。
これくらい、夢見ても許されるよね?

「シンプルなのがよくない?」

「え、純華のはダイヤがついてるのがいいだろ?」

「マリッジリングをお探しですかー?」

ふたりで仲良く見ていたら、気づいた店員が寄ってきた。

「はい。
でも今日は下見なので」

「では、なにかありましたらお声がけください」

会釈して、店員が離れていく。
おかげで、ゆっくり見られた。

「やっぱり、プラチナがいいな」

「そうだねー」

いろいろ見させてもらい、店員にお礼を言って店を出ようとしたところで、矢崎くんが足を止めた。

「なあ。
純華って三月生まれだよな?」

「そうだけど?」

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