結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
「あっ」

結局、私の反対など聞かず、彼はそれを買ってしまった。

夕食は食べて帰ろうと、同じビルの、適当な店に入る。

「……いいって言ったのに」

むすっと不機嫌なフリをして料理を口に運ぶ。

「よくない。
結婚指環の代わりはいるだろ」

矢崎くんも同じく不機嫌に料理を食べている。

「それは、そうかもだけど……。
でも、こんな高級なもの」

「純華が怒ってるのはそこなんだ?」

意外そうな声が聞こえ、顔を上げる。
レンズ越しに目のあった彼は、なぜか嬉しそうに笑っていた。

「そりゃそうでしょ?
結婚指環も婚約指環も買うんだったら、代わりでこんな高いもの買わなくていいじゃない」

もっともらしい理由を口にする。
それにこれは嘘ではないし。

「高いものって、俺にとってははした金みたいなもんだが?」

「……は?」

なにを言われているのかわからなくて、何度か瞬きしてしまう。
少し考えて、彼は高級タワマンに住む、御曹司なのだとようやく思い至った。

「あ、いや。
だってさ……」

なんか、自分の拘りポイントがズレていた気がして恥ずかしい。
俯いてちまちまと料理を食べた。

「……それでも別に特別でもなんでもないのに、こんな高いものをぽんと買ってもらうのは悪いよ」

うん。
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