結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
一日限定十食のローストビーフ丼は大人気で、いつも争奪戦だ。
数を増やすように要望はいくつも出ているらしいが、なにせすぐにはご飯にお箸が届かないほどたっぷりお肉がのせられているのに五百円という激安なため、なかなか難しいらしい。
ちなみに私が食べているチキン南蛮セットは四百円だ。
我が社の社食は安い・美味しい・カフェみたいにお洒落なので、人気が高い。

「てか純華、なんか元気ない?」

「あー……」

長く発して少しのあいだ宙を見たあと、お皿の上のプチトマトに視線を落とす。

「……なんか私、心が狭いのかなって」

自嘲して箸でプチトマトを摘まみ、ぽいっと口に放り込んだ。

「純華の心が狭いんなら、俺なんて針の先どころかないに等しいが?」

カツの一切れを器用にスプーンで半分に切り、それごとカレーを大きな口を開けて矢崎くんが食べる。

「いや、矢崎くんは私なんかよりもずっと広いよ」

「俺が寛大なのは純華にだけだ。
他のヤツには優しくないぞ?」

そう……なのか?
私の目には分け隔てなく優しく見えるけれど。

「それで、どうした?
そんなことで悩むなんて」

カレーを食べながらごく普通に彼が聞いてくる。

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