結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
矢崎くんは白のチノパンにボーダーのカットソー、それに紺のジャケットを羽織っていた。
シンプルだけれどスタイルがいいからそれだけで格好いい。
なんかそれが、羨ましかった。

一緒に街に出て、適当なカフェで少し遅い昼食を摂る。

「今から映画だと速攻でここ出るか、宝飾店の予約時間にちょい間に合わないかだな……」

料理が出てくるまでの時間で、矢崎くんは上映時間を確認していた。

「ごめんね、仕事の時間がかかって」

もう少し早く終わらせられていれば、ゆっくり映画も観られたのだ。
せっかく楽しみにしていたようなのに、申し訳ない。

「いや。
俺も無理矢理、宝飾店の予約を夕方に入れたし」

なんでもないように笑って矢崎くんは水を飲んでいる。
そういう気遣いの仕方、素敵だな。

「それでどうする?」

「そうだねー。
矢崎くんが絶対にこれが観たい!
とかじゃなきゃ、無理して観なくてもいいかな」

映画が目的じゃないし、絶対に観たい作品があるわけでもない。
矢崎くんが観たいのがあるっていうのなら付き合うけれど。

「じゃ、映画はまた今度にするか。
俺も観たいのがあるわけじゃないしな」

これで決まりだと彼は携帯をポケットにしまった。

「それで、ここ出たあとなにしようか」

< 74 / 193 >

この作品をシェア

pagetop