結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
「こんなに買ってもらって悪いよ」

矢崎くんの手には持ちきれないほどの紙袋が握られている。

「俺が可愛い純華が見たくて買ったんだから、いいの」

なんて彼は謎理論を繰り出してきて、笑うしかない。

「ねえ。
寄ってもいい?」

化粧品も取り扱うバラエティショップの前を通りかかり、足を止めた。
服の見目がよくなった分、もうすこしメイクを頑張ってみようかと思う。

「んー、ここはまた、な」

「あっ」

しかし矢崎くんは私の手を引っ張り、強引にその場を去ってしまった。

「私がメイクするのは反対?」

もう、それしか考えられない。

「いや?
俺だってもっと可愛い純華が見たいよ?
でも、買うのはここじゃなくてもいいだろ」

「はぁ……」

なんだかわからないが、彼がなにか考えているのだけは理解した。
なら、メイク道具は保留かな。

一度、車に荷物を置きに戻り、今度は予約してある宝飾店へ行く。

「矢崎様、お待ちしておりました」

私たちよりも少し年上の男性店員が出てきて、個室へと通された。

「すぐにご準備いたしますので」

彼がいったん下がったあと、待っているあいだにコーヒーが出される。
もしかして個室対応のお店なんだろうか。
お店選びは矢崎くんに任せたので、わからない。

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