結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
「お待たせしました。
本日は婚約指環と、結婚指環のご相談でよろしかったでしょうか」

「はい」

少しして先ほどの店員が戻ってきて、私たちの前に指環を並べていく。

「うかがったご予算から、オススメのものを選ばせていただきましたが……」

「えーっと。
矢崎くん?」

目の前の指環を見て、顔が引き攣る。
そんな私と対照的に、矢崎くんは涼しい顔でコーヒーを飲んでいた。

「ご予算って、どれくらい?」

「教えない」

ずいっと顔を寄せたものの、彼はすいっと顔を逸らした。

「教えないってさー」

並んでいる指環は、中央以外にもダイヤが一周埋め込まれていたり、一粒でもかなり大きなダイヤがついていたりしている。
絶対に平均的な、婚約指環の価格ではないはずだ。

「私は普通のでいいんだよ、普通ので。
なんなら、その辺の雑貨店に売ってる、数千円のでもいいし」

矢崎くんの肩を掴み、勢いよくぐらぐらと揺らす。
仮初めの結婚相手にこんな高級なもの、買わなくていい。
とはいえ、彼は私の都合など知らないのだけれど。

「うるさいなー。
俺は純華に、これくらいのものを贈る価値があると思うから、これくらいにしたの。
なんか文句ある?」

「うっ」

じろっと眼鏡の奥から睨まれ、言葉に詰まった。
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