結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
私はなにも見ていません、新しい指環を用意するために席を外していただけですって雰囲気を彼は醸し出しているが、さすが一流のお店だ。

「ほら、純華。
どれがいい?」

「あー、うん」

諦めの境地で指環を見る。
これ以上なにか言っても、その気になるまでキスされるだけだ。
キスだけならいいが、その先までおよばれても困る。
なら、無理矢理納得して選ぶしかないのだ。
そのときが来たときは、こんな高いものを買わせてしまったのを謝ろう。
……それに。
私にこれだけの価値があると言ってくれたのは、嬉しかったのだ。

「これがいい」

それでも一粒ダイヤで、その中でも小さめのを選んだ。

「それでいいのか?
もしかしてまだ、遠慮してないか?」

それにううんと首を振る。

「シンプルなのが好きなの。
だから、これがいい」

納得させるようににっこりと彼に微笑みかける。

「純華がいいならそれでいいが」

矢崎くんも納得してくれて、ほっとした。

結婚指環でまた揉めた。
だって矢崎くん、やたらと高いの選びたがるんだもん。

「あのな、純華」

はぁーっと呆れるようなため息が矢崎くんの口から落ちていく。

「うちの会社クラスの社長が、安い指環を身につけていたらまわりから馬鹿にされるの。
わかる?」

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