結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
「結婚指環は保留にしよう。
代わりのこれがあるしな」

矢崎くんの指先が、私の胸もとに下がるアクアマリンを揺らす。
今日も買ってもらったネックレスを、着けていた。

「でも俺はスーツじゃない日、着けるものがないしなー。
……そうだ。
休日に着ける、ペアのネックレスを買おうか。
プチプラのヤツ」

にかっと笑い、彼が私の顔をのぞき込む。
それで気持ちが幾分、解けた。

「それならいいよ」

私も彼に、微笑み返した。
……しかし。
矢崎くんにとってプチプラでも、私にとってはプチプラではないわけで。
また揉めたけれど。


翌日は私たちが出した条件から不動産屋さんが探してくれた物件を見に行った。
といっても、私からは「できるだけ小さい家」以外に条件はなかったけれど。

「……あのさ」

まず、通されたリビングから庭を見て、ため息が漏れる。

「なに?」

私に声をかけられ、不動産屋さんから説明を受けていた矢崎くんは振り返った。

「池が、あるんだけど」

広い庭には錦鯉が棲んでいそうな立派な池があり、その傍らには松まで生えている。

「なんだ、池が不満か?」

私の隣に立って掃き出し窓を開け、矢崎くんは庭を見た。
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