結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
これは考えても無駄なのだ。
矢崎くんにとってこの家を借りるくらい、軽いみたいだし。

「なんだ、不満なのか。
だったら別の家を探してもらうか」

「……もっと小さい家でお願いできますかね?」

「これでも小さいほうなんだけどな……」

矢崎くんは盛んに首を捻っていて、もう疲れてきた。
それに普通の建て売りより若干大きいくらいを提案しても、今度は矢崎くんから不満が出そうだし。

「……ちなみにここの家賃、いくら?
あ、いや、今住んでるタワマンとどれくらい違うの?」

具体的な金額を聞いたって彼のことだから教えてくれないだろうし、彼にとってどれくらいの負担なのかも私にはわからない。
なら、現状との違いで把握したほうがわかりやすそうだ。

「あんまり変わらない……?」

不動産屋さんが矢崎くんに近づき、手に持つファイルを見せている。
きっと、家賃を確認したのだろう。

「というか若干、安いな」

ありがとうと矢崎くんが不動産屋さんに頷く。

「そっかー……」

家賃がほぼ現状維持ならばいいような気もするが、それよりもここよりも賃料が高いというあのマンションはいったいいくらで借りているのか考えると恐ろしくなった。

「うん、じゃあいいや」

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